傍聴録●

一昨日、東京地裁にて裁判を傍聴してきました。(地方裁判所が刑事、家庭裁判所が民事を扱います。)
入口で簡単な手荷物検査を受けたあと、開廷表から今日のスケジュールを確認します。いろいろ迷った結果、簡易裁判所での裁判を傍聴することに。
「新件」とあるものが新しく裁判されるもので、事件の経緯などを最初から説明するのでわかりやすいです。
簡易裁判所は他の地方裁判所の法廷より若干狭く、書記官も一人、弁護士も一人、検察側も一人。傍聴人も私の他に一人と寂しい印象を受けました。私が傍聴したのは、住所不定無職の三十代の男性が、換金目的で本を万引きしたという事件でした。
最初に検事がこの男性の経歴を読み上げます。そして事件の詳細、証拠の提示と続いていきます。
男性には前科があり、今年3月にも同様の事件で訴訟を起こし、4月に有罪判決、現在執行猶予期間中でした。
経歴読み上げの最中、裁判官は渋い顔をしていました。お疲れなのかな?と思って聞いていると、今度は弁護士からの尋問が始まります。
どのような生活をしていたのか、何故職に就けなかったのか、など。聞いていると本当に可哀想になってくる内容でした。
窃盗事件はほとんどがホームレスで、公的機関を頼ることも出来ずに同じ罪を繰り返すと聞きますが、本当なんだと思いました。
最後に検察側からの尋問があり、裁判官に返されます。
裁判官が一呼吸おいたのち、被告に「前回の判決から僅かひと月で同じ罪で裁かれるなんて…」と感情を露にしてお怒りになりました。前回の判決も同じ裁判官だったのです。先程の渋い顔の答えはここに。
被告は目に涙を浮かべ、「最後に言いたいことはありますか」との裁判官の問いかけに、「本気で叱っていただき、ありがたかったです。今後は恥も外聞も棄てて頑張って社会復帰します。」と。
ああ、裁判ってこんなにも人間味溢れるものだったんですね。
私は裁判ってもっと淡々としていて、客観的に被告を裁いていくものだと思っていました。特に簡易裁判所のような、幾つもの事件を一定の速度でこなしているような所では。
じゃあ判決の言い渡しは来週同じ法廷で…という取り決めがされ、今回の公判は終了しました。簡易裁判で、罪状を争うものでない場合は判決が出るまでが早いようです。

傍聴して思ったのは、現場を見ることは例えノンフィクションだとしても映画や演劇を見ることとは違い、大きく心揺さぶられます。
そしてリアルと虚構の違いは何か。難しいけれど考えなきゃいけない気がするのでした…。