diary●


ガラス越しに、木枠越しに
苦いココアまぶしたりして。
習慣のように、思い出す。
去年の今頃、僕は熱を出して
死にかけていた。


どれだけ憎らしかったか知らない。
白い車はそのままで、
ココナツミルクの薫りがした。
君は今の僕さえ知らないんだね。
言葉ひとつひとつが、頬に染みた。
その日の日記はポムパドゥールで埋めてみたよ。
死にかけていた
朦朧の意識の中で。


灰色の道、必死に足跡を辿る。
疲れも帰りも考えず、ただ前に進んだ。
すれ違うだけで構わなかった。
誰にも明かさない冷たい光を、
ただ君にだけ届けたかった。
重ね合わせようとしたんだ。季節は違うけど、
死にかけていた
陽炎の瞳の中に。


覚悟の上で、冷ませ。覚ませ。
覚悟の上で、醒ませ。
覚悟の上で、冷ませ。覚ませ。
覚悟の上で、醒ませ。

死にかけていた
朦朧の意識の中で
僕は確かに君をつかみ
君はそれに気づき
僕は最後の覚悟を決めて
さよならを言った。
写真の色素も褪めた今日ですが、
覚悟の上で
さよなら さよなら さよなら
さよなら さよなら さよなら